2012/08/12

【書評】心の科学 戻ってきたハープ

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心の科学 戻ってきたハープ/エリザベス・メイヤー(講談社)

この本はESP(超感覚的知覚いわゆる超能力)について書かれた本です。
科学者である著者は当然の事ながらESPに対して懐疑的な立場を取っていましたが、盗まれた娘のハープがダウジングによって取り戻された事をきっかけに改めて考え始めます。そして、科学者としては考える事もはばかられるような仮説に辿り着きます。「もしESPが確かに存在すると仮定したら、それは間違いなく現在の科学の外にある。科学的に検証できないから存在しないのではなく、科学が扱う領域を広げる必要があるのだとしたら?」

その仮説を検証するために、過去の科学者が行った研究成果を検証し、ESPの体験談を収集し始めます。発見された価値のある(そして無視された)多くの研究成果、科学者・医療関係者から集まったESPの秘話的な体験談から、仮説が正しいという思いを強めていきます。

本書の書評を書いたフリーマン・ダイソンは、「ESPに対して個人が取る立場は大きく2つある」と述べています。
・ESPなど存在しないという科学者の立場
・ESPは実在するし、科学的手法で存在を証明できるという信奉者の立場

個人的にはもう一つ付け加えて3つとしたい所です。
・ESPは実在するが、科学的手法などという無粋なものでとらえる事はできない神秘的なものであるという狂信者の立場

この本の一番の魅力的は、著者のエリザベス・メイヤーがどの立場の人に対しても否定も断定もせず、友好的対話を維持する可能性を探っている所にあります。ESPの信奉者ではない、しかも一流の科学者が第四の立場の可能性を提示した本書は、一読する価値があります。科学的思考を重んじ、それでいて頭の柔らかいESP懐疑派がこの本を一番楽しめると思います。

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